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潜水について

潜水の歴史

 遠い昔から人類は、魚のように水の中を自由に行動することを望んできました。それは、鳥のように空を飛ぶ望みと同じようなものでしたが、生活に密着している目の前の海への願望の方が遥かに強かったに違いありません。

 それでは、人類が本来の活動領域ではない水の中に潜り始めたのは、何時の頃からなのかそれを明らかにすることは極めて困難なことかも知れませんが、野生動物の生態から推測して、少なくとも人類が誕生し水辺に住み着くとともに、水との接触が開始されたと考えるのが自然ではないでしょうか。始めは単なる好奇心から、それが水浴となり、やがて食料として水中の動植物採取に気づいた人間の行動は、より深い海を対象とした水中活動に向けられていったと考えられます。

 それは海女として現代にその形態を伝える「素潜り」と呼ばれるもので、古くは古代メソポタミアの遺跡から青真珠貝母の象眼が見つかっていることなどから、既に紀元前4500年の頃には素潜りが行われていたものと思われます。

 人間は長い歴史の中で、それぞれの時代を反映した思想や科学技術のもとに、厳しい水中環境に挑戦し続け、現代の潜水技術や器具を開発してきたのです。

 この後も、私たちが「潜りたい」という欲求を失わない限り、潜水技術は進歩していくことでしょう。

日本の潜水の歴史

 四面を海に囲まれた日本では、日常生活から生産活動、余暇に至るまで、海は人々の暮らしに密接な関係を持っています。その中で潜水との関わりはどの程度でしょうか。水産関係では魚貝、海草などの採取、高級魚など捕獲の為の定置網の設置、保全作業等があります。建設関係では食料品、工業原材料を国内外から搬入し、工業製品などを国内外に搬出をする際の玄関口港湾の整備、多様化する交通網である架橋、海底トンネルの建設、石油化学工業を支える海底パイプラインの敷設、保全作業などは、潜水作業なしでは成り立ちません。

 また、日本を延々と取り巻く海岸線がもたらす豊かな自然と明媚な風光は、住民に豊かな生産と、潤いのある環境を与えます。しかし、津波、台風、冬期風浪などが一旦荒れだすと、貴重な人命や家屋財産に危険を及ぼす災害を発生することがあります。このような災害への予防対策、発生後の復旧など、日本の国土を守るために色々な場面で潜水作業を必要とするのです。

開発の歴史

 人間が息をこらえて潜水する「素潜り」は、日本も古代から行われており、その技術は「海女」に受け継がれ現在に至っています。歴史的には西暦285年に書かれた「魏志倭人伝」に海女によるサンゴや魚介類の採取が紹介されています。

 その後、近代まで素潜りの時代が続き、安政4年(1857年)初めてヘルメット潜水器が導入され、明治5年(1872年)には早くも海軍工作局において製造が開始されました。また民間においても明治5年には、増田万吉氏がオランダから10台のイギリス製のヘルメット潜水器を輸入して以来、製造にも着手され、本格的な潜水の時代がスタートすることとなったのです。特にゴム製潜水服の製造は日本のゴム工業の始まりと言われ、注目されたようです。


 このようにして日本に導入された本格的な潜水技術は、明治10年(1877年)頃にはアワビの潜水漁業や各地の港湾建設を始め、サルベージ作業などに活躍しました。明治中期にはアラフラ海における白蝶貝の採取が盛んとなり、多くの潜水作業船団を現地に派遣しています。その後、大正2年(1913年)日本が独自に考案したマスク潜水器が実用され、マスク潜水器を母体にして開発された大串式潜水器を大正13年(1924年)片岡弓八が使用し地中海70m海底に沈んでいた「八坂丸」から金塊の引揚げに成功し、その名を高めることになりました。

 本来マスク潜水器は、重装備のヘルメット潜水器を軽量化して、手軽に潜水する目的から派生した潜水器で、現在、日本では幅広く使用されている潜水器となっています。

現在の状況

 狭い国土の周囲をグルリと海に囲まれた日本において、人々の生活は海との関わりを無くしては成り立ちません。国内に資源の乏しい日本は、養殖漁業、海底鉱物など豊富な海洋資源の利用や、海外からの資源を加工し高い価値を付けて海外に送る技術などの開発を図る必要があります。国内産への依存度の低い食料品の輸入も大切です。これらの厖大な数量にのぼる物品が国内に入荷し、国外に出荷する際、陸上運送と海上運送の切替が行われる場所が、港湾や漁港です。

 港では旅客や貨物が、何時でも効率よく対処できる施設を要請されるため、これらの維持改修は従来から重要な業務とされています。また、港湾の拡張、港湾施設の改変、ダムや上下水道の施設設置などに当たり、環境変化に対する予測調査、海域や湖沼の環境調査等が義務付けられました。環境変化に対する社会の関心が高まり、水中調査等潜水作業に新しいニーズを発生させました。  

 海洋立国を目指す日本においては、海と良好な関係を維持しながら、安定した生活を維持していくため、潜水作業が果たしている役割はこれからますます重要となっていくことでしょう。

世界の潜水の歴史

 延々と続いた「素潜り」の歴史に、潜水器らしきものが登場したのは17世紀のことです。人類誕生からの長い歴史の中では、極く最近のことに過ぎません。しかし、その後も潜水器の開発は"より深く、より長く、より安全に"を目標に絶間なく続けられ、特に近年においては高度な科学技術に支えられながら、各種産業からの要請に対応し急速な進歩を続けています。

開発の歴史

 人間が息をこらえて水中に潜る「素潜り」が潜水の始まりであり、歴史的にはこの時代が長く続きました。その後、間もなく水中からの食料調達を主体とする行動に変わっていったと思われます。

 欧米においては戦争中における敵船舶への攻撃、港湾に対する防衛などの軍事目的から、沈没船からの荷物の回収などサルベージ作業にまで応用される技術として発展することとなります。その潜水に革命的な進歩をもたらしたのが1650年ゲーリケ(ドイツ)により開発された空気ポンプの登場です。空気ポンプはその後スミートン(イギリス)らによって潜水用に改良され、空気を陸上から水中に送り込むことができるようになったのです。1797年にはケレンゲルト(ドイツ)による金属製大型ヘルメット、銅製のベルトで構成される最初の実用潜水器が、1837年にはシーベ(イギリス)による排気弁付き金属ヘルメット、潜水服で構成されるヘルメット式潜水器が開発されるなど、急速な発展を続けるようになりました。そして20世紀に入った1943年には、有名なクストー(フランス)らにより「ボンベに充填した高圧空気が、圧力調整機により自動的に潜水深度に応じた圧力に調整されて供給される呼吸装置」が開発され、従来の他給気式潜水器(ヘルメット潜水器)に加え、スクーバと呼ばれる自給気式潜水器が誕生し、ここに潜水技術の基本形が出揃う状況に至ったのです。