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潜水様式

港湾潜水作業など水中で行われる建設工事に従事する潜水作業では、使用される主要な潜水様式としてヘルメット潜水、フーカー潜水、スクーバ潜水の3種類があげられます。

ここでは、各様式について長所、短所、主な機能等を説明しましょう。

ヘルメット潜水

 ヘルメット潜水装置が日本に持ち込まれたのは1857年(安政 4年)ですので、凡そ140年に亘って使用され続けているのです。その間に大きく変わった点は、空気を送る装置が手押しポンプからコンプレッサーに、合図の方法が信号索から水中電話に改良された程度と言いますから、いかに完成度の高い製品だったかが窺われます。ヘルメット潜水装置が導入されて以来、貝、海草等の採取、船底の修理・手入れ、サルベージ作業、水中で行われる工事などあらゆる潜水作業に長い間使用され続け、多くのベテラン潜水士を育てました。ヘルメット潜水器具は、ヘルメット、潜水服、潜水靴、重錘、ベルト、水中ナイフなどで構成されています。空気はコンプレッサーからホースでヘルメット内部に供給され、潜水服内部にも流通しています。潜水士は、その空気を呼吸しながら、常に作業の状態に適した浮力を維持する必要があります。

 ヘルメット潜水による作業は、コンプレッサーや、ウインチ等を設置してある潜水士船を作業基地として、潜水士、連絡員、送気員の3人チームで行うのが基本です。

 ヘルメット潜水の長所は、潜水服内に空気を貯留し、その浮力を利用して重量物を扱うことができること。万一送気が止まった場合でも潜水服内の空気を利用して救助を待つ余裕があること。寒冷水域の潜水にも対応できることなどです。短所は浮力の調節に習熟を要するため潜水技術の習得に長時間を要すること。装備の重量が60kgに達するために着脱の際には連絡員、送気員などの手助けがいること。他の潜水様式に比べ機動性に劣ること等です。

ヘルメット潜水

フーカー潜水

 フーカー潜水は長時間の潜水が可能であるが、重厚な装備のため機動的な行動に向かないヘルメット潜水と、行動が自由で高い機動性を持つが、携行空気量から潜水時間に制限を受けるスクーバ潜水の短所を排除し、長所を組み合わせたものです。スクーバ潜水のボンベの代わりに、コンプレッサーに連結されたホースの末端に取り付けた圧力調整器(セカンドステージ)から呼吸用空気の供給を受けます。フーカー潜水器具は圧力調整器、マスク、潜水服、足ひれ、ウエイト、水中ナイフ等により構成されます。

 長所は、スクーバ潜水に準じた運動機能と、ヘルメット潜水と同じく制約を受けない潜水時間にあり、従って、作業潜水の総ての分野に採用できることです。また、消費する空気量がヘルメット潜水の1/2~1/3に過ぎないので小型軽量の可搬式コンプレッサーの使用が可能となり、これがフーカー潜水の機動性を更に高めています。短所は、頭部と足部の衝撃に対する防御が貧弱なため、重量物を取扱う捨石均しなどの作業には不安があることです。

フーカー潜水

スクーバ潜水

スクーバ潜水器具は、1943年(昭和18年)に開発され、戦後は「アクアラング」の商品名で世界中に急速に普及しました。日本では昭和20年代に米兵等がスポーツ用の潜水器具として持ち込まれたのが始まりで、現在ではスポーツダイビングから作業潜水に至る広範囲の分野で採用されています。スクーバ潜水器具は、空気ボンベ、圧力調整器(レギュレーター)、マスク、ウェイト、足ひれ、潜水服、BC、残圧計、水深計、水中時計、水中ナイフ等で構成されます。空気ボンベは15~20Mpaの高圧に圧縮された空気を充填する容器で、容量12~18Lのものが多く使用されます。この高圧空気を潜水深度と同じ圧力に調整し、呼吸できるようにするのが圧力調整器(レギュレーター)です。レギュレーターは高圧空気を1Mpa未満の中圧に減圧するファーストステージと、中圧から潜水深度の圧力まで減圧するセカンドステージに分かれ、ファーストステージはボンベにセットされ、セカンドステージにはマウスピースが取付けられています。

長所は、呼吸用空気を潜水士自身が携行するので、行動範囲が限定されないこと。他の潜水様式に比べ、機動性が高いことなどで、水中の行動が比較的自由度が高いため、各種調査作業に活用されます。近年では超音波無線通信装置による交信が可能となり、更に活動分野を広げています。

短所は、単独の行動ができ、行動範囲が制限されないなどの反面、作業や安全の管理上問題が生じる可能性があること。また、携行空気量によって潜水時間が制限されることなどです。

スクーバ潜水